3年目の由伸ジャイアンツは勝利と育成の2兎を追う

高橋由伸ユニフォーム 巨人を語る

球春到来! いよいよ待ちに待った2018年のプロ野球キャンプがスタートした。

2017シーズに初めてクライマックスシリーズ出場を逃した巨人、今年は「奮輝」をスローガンに若手育成・世代交代をテーマに掲げている。
正直、何をいまさら声高に言っているんだという感じ。ひいき目に見ても、今年のジャイアンツは苦戦しそうだ。

やりくり上手の原采配が巨人の世代交代を遅らせた

ジャイアンツの主力の高齢化は、今にはじまったことじゃない。
原監督時代の2013年くらいから言われていたことだ。
でも、常に勝利を目指さなければいけないという巨人の伝統に従い、原監督は毎年のペナントレースを優先し、若手育成は二の次になった。

WBCで侍ジャパンを世界一に導き、巨人では通算12シーズンで7度の優勝、3度の日本一、2度の3連覇を成し遂げた名将・原辰徳監督。原監督の采配の特徴は、「適材適所」と「やりくり上手」にあると僕は思っている。

特にオガ・ラミが抜け、高橋由伸、阿部慎之助もフル出場が難しくなった2014年以降はその「やりくり上手」ぶりが目についた。
スタメンオーダーは日替わりだったし、状態の良い選手を2軍から上げてきては、すぐに起用し、結果が出なければまたすぐに降格させる。打線もかつてのような迫力がないから、クリーンアップであっても送りバントのサインは日常茶飯事。
それでも、そつない走塁や徹底したフォア・ザ・チーム戦術、勝負所での代打・代走の起用などで、接戦をものにしてきた。

結果、2014年はクライマックスシリーズで敗れたもののペナントレースは優勝、2015年は戦力的にはBクラスでもおかしくない状況で2位。それと引き替えにチームの世代交代は確実に遅れた。監督が原辰徳じゃなかったら、そうはならなかっただろう。でも、それは僕ら巨人ファンが望んだことでもあった。

そして2015年シーズン終了後、原監督はチームを去った。老朽化した巨人軍を後に残して。

若手育成に徹しきれなかった由伸巨人の2年間

2016年も現役選手として活躍するつもり満々で、自主トレの手配すら済ませていた高橋由伸に突如として渡された第18代読売巨人軍監督のバトン。「そりゃないよ」と本人はもちろん、巨人ファンの多くがそう思った。

ジャイアンツで選手引退即監督となったのは長嶋茂雄以来。連覇が途切れ、高齢化したチームを率いるという点など、第1次長嶋ジャイアンツと重ねて見る人も多かった。長嶋監督の初年度の成績は、巨人史上初の最下位。チームを押し付けられる形で船出した高橋由伸監督を同情する声も多く、1年目は球団首脳もファンも過度の期待は持っていなかったはずだ。「Bクラスでも仕方なかろう」と。由伸監督と同学年の僕の知る限り、近年の巨人の歴史のなかで最も優勝を狙わなくてもよい年だった。

その意味では思い切って若手にシフトできる1年だったと思う。けれど、積極的な若手起用は見られず、戦い方を知るベテラン・中堅どころ中心の戦い方で2位。そつなくAクラスをキープした。

2017年、2シーズン目を迎えた由伸監督は、岡本や重信、辻、山本らをオープン戦で積極的に起用し、若手育成を意識したスタートとなった。岡本は開幕スタメンの座を勝ち取ったものの、結果が振るわず2軍落ち。長らく固定できないセカンドも中堅どころの中井がもっとも多く起用され、外野のメンバーも秋には長野、陽、亀井や橋本といった顔ぶれに落ち着いた。

「笛吹けど踊らず」――若手を使ってはみたものの、結果が出なかった。結果が出なければ使われないのは当たり前。正論だ。それでも、シーズンを途中で捨てても、我慢して若手を使い続ける転機はあった。
そう、あの悪夢の13連敗だ。球団ワースト記録を更新し、オールスター前の時点で首位広島とは14.5ゲーム差の4位。残り試合数が61で優勝を狙うのはとてもじゃないが無理。みんなそう思っていたはずだ。

ジャイアンツ的には、優勝の可能性がなくなるまで、「最後まであきらめずに戦います」とファイティングポーズをとらなければいけないのかもしれない。でも、それはあくまでもタテマエ。クライマックス圏内のAクラスを狙いつつ、若手主体の起用に切り替えてもよかったのではないかと僕は思う。「若手の力でAクラスを獲ってこい!」くらいの思い切りが欲しかった。

実際には由伸監督は逆に舵を切った。計算できる戦力でAクラスを狙うという戦い方だ。2番セカンドにマギーを置き、内外野は中堅・ベテランで固め、スタメンに若手が割り込む余地はなくなった。結果、オールスター前にあった6つの借金を返し、4つの貯金を作った。大したもんだと思う。

けれど、それだけだ。

3年目にのしかかる重圧

2017年のジャイアンツは4位に終わった。ベテラン中心のオーダーで3位を狙ったものの、クライマックスシリーズ出場を初めて逃すという結果となった。これが、若手中心の起用であれば、たとえ4位であっても言い訳はできた。

監督をはじめ、コーチ陣もほぼ留任。結果責任を問われることはなく、「来年こそは頼むぞ」という期待と重圧だけが、監督にのしかかる。

そして迎えた2018年、由伸ジャイアンツは優勝とチームの世代交代の両方を求められるシーズンとなってしまった。

「育てながら勝つ」では間に合わない。ある程度数字が読める既存戦力をいくら積み上げても優勝厳しい。プラスアルファの力、若手が序盤から成績を残していかなければ優勝できない戦力だと思う。連覇した広島との戦力差はそのくらいある。

若手がどれだけキャンプ、オープン戦で結果を残すか? 期待というよりも祈りに近い思いで2月・3月のジャイアンツを見ていこうと思う。

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1975年、ジャイアンツの歴史上、唯一の最下位だった年に生まれる。
同学年の選手は高橋由伸、上原浩治、高橋尚成、井端弘和、岡島秀樹など。

生まれてからの最初の記憶が、祖父の家のテレビで観た王さんの756号という巨人ファン。1989年の近鉄との日本シリーズ、3連敗からの逆転日本一を疑わず、それが実現したことから、本格的にジャイアンツにのめり込む。

高校時代から東京ドームに通い始め、1994年には東京ドームでアルバイトをし、日本シリーズでは長嶋茂雄監督の胴上げを生で観る

大学時代に某スポーツ解析ソフトウェア会社にアルバイトとして働き始め、そのまま入職。野球とラグビーのデータ入力と解析を担当した。

2008年には年間およそ50試合ほど、東京ドーム、神宮、横浜などで観戦したが、仕事の都合上、現在は日テレG+での観戦やネット観戦が多い。

夢は東京ドームの年間シートを購入して、毎試合生観戦すること。

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コメント

  1. […] 3年目の由伸ジャイアンツは勝利と育成の2兎を追う参照)。 […]

  2. […] 今年の2月に3年目の由伸ジャイアンツは勝利と育成の2兎を追う でも取り上げているけれど、若手育成なら就任1年目、2年目でやっていればよかったと思うし、コーチ陣も2017年のBクラス […]

  3. […] 今年の2月1日に、「3年目の由伸ジャイアンツは勝利と育成の2兎を追う」でも述べているが、由伸ジャイアンツは「勝利」と「育成」の2つを追いかけなければならない2018シーズンだった […]

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