原辰徳 伝説のバット投げホームラン「怒り」は嘘だった!

原辰徳バット投げホームランの勘違い OB列伝

ジャイアンツ原監督の現役時代のホームランで、印象深いホームランの一つに、神宮球場での「バット投げホームラン」があります。
この伝説的なホームランシーン、「怒りのバット投げホームラン」なんて言われたりして、勘違いしている人も多いみたいです。実は私もそうでした。

というわけで、私みたいに勘違いしている人もいると思うので、神宮のバット投げホームランを正しく解釈したいと思います。

神宮球場・原辰徳バット投げホームランの状況

まずは、どのような状況で原辰徳がホームランを打ったのか、状況と事実関係を整理しましょう

1992年 7月5日 神宮球場 ヤクルト-巨人 14回戦
9回表 4-2 ヤクルト2点リード 1死1塁
投手 伊東昭光(先発 2勝1敗 防御率2.07)
捕手 古田敦也

1992年のジャイアンツは、藤田元司監督の下で最終的に67勝63敗の2位に終わり、野村監督率いるスワローズが優勝します。
7月3日から5日の神宮球場の3連戦は、オールスター前の最後のヤクルト戦で、ジャイアンツが3連勝すれば首位に並ぶという状況でした。
そして、7月3日、4日と連勝し、迎えた3戦目です。

ジャイアンツの先発は桑田。
初回に1点、2回に2点を失い序盤で0-3と3点ビハインド。
4回表に岡崎のソロホームランで1点を返しますが、その裏に桑田は1点を取られ、1-4。

ジャイアンツベンチは先発・桑田をあきらめ、6回から中継ぎ投手の広田を投入。
広田が6回、7回を0点に抑えると、8回表デーブこと大久保博元のソロホームランが出て、2-4と2点差に追い上げます。

ここで藤田監督は守護神・石毛を8回裏に投入し、ヤクルト打線を抑え味方の反撃を待つという状況でした。
そして、3番の岡崎が四球で出塁し、4番の原が劇的な同点ホームランを打つのです。

試合は延長11回に1点を勝ち越したジャイアンツが5-4で逆転勝ちし、首位ヤクルトに並ぶのです。

【事実関係の整理】
前の打者岡崎は四球
原の打席でインハイにのけぞるボールがあった
原が打ったのは同点ホームラン
打った直後にバットを放り投げてドヤ顔

「怒り」の勘違い1 原は不振ではなかった

原辰徳の「怒りのホームラン」みたいなものがあるとき、その原因が、原が不振で前の打者が四球で歩かされるというケースが多いです。
確かに3番の岡崎は四球で出塁しているのですが、2-4の状況でわざわざランナーを出すということはあり得ません。

エピソードとして、岡崎が原に

「原さん、死んでも塁に出ますから絶対返してください」

と耳打ちし、実際に四球で出塁しており、岡崎が四球をもぎ取った結果と言えるでしょう。

この試合は、ここまで原はノーヒットだったので、少なくとも原は不振だったんじゃないかという印象があったのですが、それが大きな勘違いでした。

この試合の前まで、原は不振ではなく、むしろ絶好調でした

7月3日 原 5打数2安打
7月4日 原 3打数3安打2本塁打

前の日に2本塁打、そしてこの試合、ここまでノーヒット。むしろ、「そろそろ打つんじゃないか」って思いますよね。できれば勝負を避けたい状況です。

春先の不振の印象が残っていた

このように原は絶好調の状況で、あの「バット投げホームラン」を打ったわけですが、なぜ「原は不振だった」なんて印象があったのか?

それは春先の原の状態とチーム状況にあります。

【春先の原の成績と巨人の勝敗】
4月終了時 .153 3本 8勝11敗
5月終了時 .231 5本 16勝26敗(月間8勝15敗)
6月終了時 .280 11本 32勝31敗(月間16勝5敗)

5月が終わった時点で、ジャイアンツは借金10。4番の原も.231の低打率。
それが6月終了時にはひとつの勝ち越し。原も打率、本塁打数を伸ばし、6月反攻の大きな原動力になりました。

悪かった時の印象がどうしても残ってしまうものなんですね。

「怒り」の勘違い2 のけぞったのはブラッシュボールではなかった

バット投げホームランの2球前に、原はインコースのボールにのけぞってしりもちをつきます。
これが、いわゆるブラッシュボールで、このブラッシュボールに対して「怒った」という印象を持っている人もいるかもしれません。

でも、実はこれ、ただのフォークのすっぽ抜けなんです。

捕手の古田は1球もインコースに要求していないんです。

そりゃそうですよね。絶好調の4番打者に対して、ホームランだけは絶対ダメな9回表。投手は技巧派の伊東。外角の変化球中心の配球というのは定石です。だから、原も踏み込んでいって、抜けたフォークにしりもちをついてしまったわけです。

つまり、1992年神宮球場で打った原のバット投げホームランは「怒り」ではなかったということです。

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